銭湯でいつも、時空を超えた気分になる銭湯の湯船につかって、洗い場に並ぶ人たちを眺めていると、タイムスリップしたような気持ちになります。もちろん現代風の洋服はなく、着瘦せ術で隠されていた意外と存在する贅肉が見え、髪は濡らしてしまえば、ボブもゆるふわもなにもありません。つけまつ毛をはずして、きれいに描かれた眉毛を落とせば、きっと室町時代にもこんな人いたんだろうなぁという感慨深い顔に皆なります。おばぁさんも、おばちゃんも、おねえさんも、若者も、お風呂ですべて脱いで洗い流せば、2016年の人かどうかなんて、わからなくなる……湯気の向こうに見える風景を眺めていると、そういう時空を超えた感覚になって、いつも一人でいいなぁと思っています。16Sep2016場所
喫茶店の貴婦人。変わらないものへの憧れと恐怖「お待たせをいたしました。お紅茶です。あとお砂糖も……あら、こちらお砂糖を入れているから、お砂糖はいらないのでしたわ。でも、置いておきますので、足りなかったら使ってくださいましね。」立ち襟のテロッとした花柄のブラウスとしっかりした素材の膝丈スカート。後ろできれいにまとめた白髪。やわらかく丁寧な所作。そして、なにより現実世界ではあまり聞いたことのない言葉遣い。貴婦人だ。昔の小説を読んで想像したことしかなかったけれど、そう思った。2016年の中央線沿いの雑多な街で、彼女は異彩を放っていた。絶え間なく訪れる台風で、なかなか洗濯ができなくて、今日はとうとうコインランドリーに来た。シーツがぐるぐるまわっている間にと訪れた、コインランドリーの隣...10Sep2016場所